EUのAI法に対応するうえで日本企業が最初に取り組むべきことは、複雑な規制文書を読み解くことではありません。最も重要なのは、自社がどこでAIを利用しているのかを正しく把握することです。EU向けのサービスやプロダクトの裏側でAIを使っていれば、日本国内で開発していても規制の対象となります。
だからこそ、対応の出発点は「AIの棚卸し」です。どの業務でAIを使っているのか、どのサービスに組み込まれているのか、外部の生成AIをどう利用しているのか──これらを整理するだけで、必要な対応の8割は方向性が見えてきます。
AIの棚卸しは、EU AI法対応の基盤となる作業です。利用状況が曖昧なままでは、どの義務が必要なのか判断できず、過剰対応や見落としにつながります。まずは自社のAI利用を可視化し、全体像を把握することが不可欠です。
業務プロセス、サービス機能、外部APIの利用状況などを整理することで、次に行うべきリスク分類の精度が大きく高まります。
棚卸しが完了したら、次はAIシステムのリスク分類を行います。EU AI法では、AIを禁止AI・ハイリスクAI・生成AI(GPAI)などに分類し、それぞれに求められる義務が異なります。
特にハイリスクAIに該当する場合は、リスク管理、データ品質、ログ管理、透明性、人による監視、セキュリティ、技術文書、CEマーキングといった「8つの義務」が発生します。一方で、該当しなければ重い対応は不要です。
生成AIを利用している企業も例外ではありません。学習データの扱い、著作権への配慮、生成物の透明性確保など、利用者としての義務が求められます。外部APIを利用しているだけでも対象となるケースがあるため、見落としやすいポイントです。
生成AIの利用状況を正しく把握し、必要な対応を整理することで、リスクを最小限に抑えながら安全に活用できます。
最後に必要となるのが、AIガバナンス体制の整備です。AI責任者の設置、社内ルールの策定、ベンダー管理、文書化プロセスなど、運用の仕組みを整えることで、継続的にAIを安全に活用できる基盤が構築されます。
一度体制を整えてしまえば、EU AI法対応だけでなく、今後のAI活用全体の品質向上にもつながります。
EU AI法は厳しい規制に見えるかもしれませんが、早めに対応しておくことは企業の信頼性を示す強力な証明となります。海外企業との取引、AI品質の担保、リスク管理の高度化など、多方面でプラスに働きます。
AIを活用する企業にとって避けて通れないテーマだからこそ、今のうちに体制を整えておく価値があります。
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